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高松高等裁判所 平成8年(ネ)240号 判決 1997年5月29日

愛媛県伊予三島市寒川町四二二七番地

控訴人

青木常雄

愛媛県伊予三島市寒川町四二二七番地

控訴人

株式会社トキワ工業

右代表者代表取締役

青木常雄

右二名訴訟代理人弁護士

高橋早百合

右輔佐人弁理士

小林茂雄

富崎元成

愛媛県八幡浜市大字松柏丙八三一番地

被控訴人

丸三産業株式会社

右代表者代表取締役

菊池公孝

右訴訟代理人弁護士

宮部金尚

菊池潤

右輔佐人弁理士

松野英彦

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人は、原判決別紙第一物件目録及び原判決別紙第二物件目録記載の各物件を製造し、又は販売してはならない。

三  被控訴人は、その本店、営業所及び工場に存する前項記載の各物件を廃棄せよ。

四  被控訴人は、控訴人青木常雄に対し、二一〇〇万円及びこれに対する平成七年一二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員(原審請求を減縮)を支払え。

五  被控訴人は、控訴人株式会社トキワ工業に対し、五〇〇〇万円及びこれに対する平成七年一二月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員(原審請求を減縮)を支払え。

第二  事案の概要

原判決の「理由」欄の第二記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に対する当裁判所の判断

次のとおり補正するほか、原判決の「理由」欄の第三記載と同じであるから、これを引用する。

一  二七頁一一行目から二八頁一〇行目までを次のように改める。

「(二) ところで、実用新案法は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案を保護の対象とし(一条、三条)、特許法のように「方法」を保護の対象としていないから、実用新案登録請求の範囲に物品の形態(形状、構造又は組合せ)を実現するための方法・順序(製造方法ないし工程)を記載することは、本来ならば許されないはずである。ところが、本件考案の構成要件(4)のように、実用新案登録請求の範囲に方法的記載がされたまま登録されることがある。このような実用新案登録請求の範囲をどのように解釈するかが問題となるが、物品の形態を正しく表現するには、その製造工程を記載するのが適切であることが多いことにかんがみれば、実用新案登録請求の範囲中に記載される製造方法ないし工程は、その実施の結果得られる特定の形態を、方法的表現によって間接に記載したものと解するのが相当である。」

二  三一頁四行目末尾に「ただ、前記乙一〇の実用新案登録願添付の第4図には、「点線で薄片B側の上方左石隅角部C、Dが薄片B側の表面の内方に向かって三角形状に折り重なっている」旨図示されていた(甲二六参照)。」を加え、同五行目の「したがって」を「しかし」に改め、同九行目の「全く」を削る。

三  四〇頁七行目・四一頁四行目・四二頁二行目・同三行目の「構造」を「形状・構造」に、同五行目の「本件考案」から同七、八行目の「限定されるものであり」までを「本件実用新案登録の技術的範囲は、構成要件(1)(2)(3)によって特定される有底袋体であって、右<1><2>記載のとおりの形態に開口部が狭窄、包被された茶パックに限定されるものと認めるのが相当であり」に改める。

四  四四頁九行目から四五頁三行目までを次のように改める。

「(5) 以上のとおりであるから、本件実用新案権の保護の対象となるのは、構成要件(1)(2)(3)によって特定される有底袋体であって、前記(3)<1><2>のとおりの形態に開口部が狭窄、包被された茶パックに限定されるものと認めるのを相当とする。」

五  四五頁七行目の「構造」を「形状・構造」に改め、同一〇行目の「四ないし六の各1・2」の後に「、検甲三ないし六」を加える。

六  四七頁六行目の「検甲三」の後に「、四ないし六、甲三、甲四ないし六の各1・2」を加え、四八頁二行目の「積極的に」を削り、同三行目の「折り重ね」の後に「て開口部を狭窄した上」を加え、同四、五行目の「必ず確実かつ顕著に」を削り、四九頁八行目から五〇頁六行目までを次のように改める。

「したがって、本件考案の構成要件(4)前段の<1>上方左右隅角部C、Dを薄片B側の表面の内方に向かって三角形状に折り重さねて開口部を狭窄し、<2>後段の、他方の裏薄片A側の折り畳み部を折り返して狭窄口と三角形左右隅角部を包被するという物品の形態をとらず、イ号・ロ号物件のように、単に、重畳部3を薄片B側に折り返して開口部を包被した結果、上方左右隅角部C、Dが薄片B側の表面内方に向かって若干三角形状に折り重なり、開口部が若干狭窄されたかの如き状態になっている茶パック(時には、開口部が若干狭窄されたかの如き状態にすらならない場合もある茶パック)は、本件考案の技術的範囲には含まれないものである。」

七  第三の一の3の(四)(五〇頁七行目から五一頁五行目まで)を次のように改める。

「(四) 以上の次第で、イ号・ロ号物件における茶パック等の開口部の狭窄、包被の形態と、本件考案に係る茶パックの開口部の狭窄、包被の形態は異なるものであるから、イ号・ロ号物件は、いずれも本件考案の構成要件(4)を充足せず、本件実用新案権を侵害しない(本件考案の茶パックは、開口部が三角形状に狭窄された上、これを包被する形態を持ったものであるのに、イ号・ロ号物件の茶パック等は、開口部が若干狭窄されたかの如き状態になっているにすぎず、時には、開口部が若干狭窄されたかの如き状態にすらならない場合もある。)。」

八  五一頁一〇行目・五二頁三行目の「構造」を「形状・構造」に改める。

第四  結論

よって、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 裁判官 奥田正昭)

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